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2011年 04月 26日
湯河原にある高級旅館「山翠楼」と「海石榴(つばき)」の松下社長にインタビューをした。松下社長はホテルマンとして長年勤められ、まだ「山翠楼」と「海石榴(つばき)」が個人オーナー時代に旅館経営にもホテル的な感覚を取り入れたいというオーナーの意向を受け、副社長兼総支配人として勤められ、今回、ファンドがこの旅館を経営するにあたり、「代表取締役」として就任された方で、松下社長が考える「旅館経営」についてお話を伺った。
個人経営からファンド経営へ 過去の負債から見事に再生したと伺っておりますので、従前の状況から、一つには、どういうことでこういう再生に至ったのか。 どういった形で再生に取り組んで実行されたのか。 その後の今の運営について、例えば金銭的な部分で、資産の運営・管理をどう評価し、その時にどのような投資をされたのか。 ≪松下≫ 確かにこの旅館は、前に創業者オーナーがいました。 オーナーは事業を多角化しておりまして、オーナーが別の事業に傾注するために、ここをファンドに資産売却したわけです。 私は、2年ほどオーナーのもとを離れていましたが、オーナーが全部引きましたので、 ファンドには旅館に対する経営ノウハウがないものということで、ファンドから「経営をしてくれ」 と頼まれて、現在ここを経営しているという形です。ですから、もちろんオーナー社長ではなくて、 ファンドの雇われ社長で、オーナーはファンドであるという形です。 ファンドのもとで今は経営しておりますので、資産をどうこうとかいうことについては、私はタッチしていません。 出された範囲で、これだけのGOPを稼いでくださいと、言われているのです。 ファンドは、ここの資産価値を高めたらしかるべき投資家とか、オーナーへ売ることになる。 その過渡期の経営を私が任されているという形です。 売却が起こったのはいつごろですか ≪松下≫ 売却が起こって完全にオーナーが手を引いたのが、平成20年1月からです。 ただ、その1年ほど前から、売却するということで、ファンドが乗り込んできていろいろやっていたわけです。 このオーナー、社長さんは個人ですけど、前は会社組織だったんですか。 ≪松下≫ 会社組織でした。やはり株式会社山翠楼という会社で、ここの山翠楼と、その隣に、業界ではかなり有名旅館ですが、海石榴(つばき)という、規模はここの半分くらいしかない小さな旅館ですが、ステータスは比較的高いもので、その旅館と2つを経営されていました。 今、部屋数はどれくらいですか。 ≪松下≫ 旅館の場合、ホテルとは違って部屋数が比較の対象になるかどうかはわかりませんが、山翠楼が57、隣の海石榴は29で半分くらいです。 この山翠楼は、だいぶ前ですけど、70周年をやりましたけど、もう80年くらいに近くなりますけど、隣の海石榴という旅館は30年ほど前につくったと思います。ここを開業したのが昭和8年ですから。もちろん、そのころの建物は影も形もありません。 30年ぐらいだと、バブルが始まるころですね。 ≪松下≫ そのときに、湯河原の平均宿泊料が7,000~8,000円のころに、いきなり1泊3万円の旅館をつくったと有名になりました。今でも、海石榴のほうは1人の平均単価が5万円ですから、高い方はもっと払うわけです。 そういう旅館ですけど、当時、商売は非常に苦しかったという話ですが、やはりバブルの時流に乗って、一時は経営に先見の明があったと言われた経営者ですけどね。 今でも、単価的には5万円くらいですよね。 ≪松下≫ そうですね。今、バブルがはじけてだいぶ安くなったといっても、4万8,000円から5万円くらいです。 再生するための旅館経営 老舗旅館が時代的になかなか難しいということで、リニューアルして、全く違う形態にしてということも今は結構たくさんあるので、そういうイメージを持っていましたが、実際には変えていないということですね。人的な変化(合理化等)はあったのでしょうか。 ≪松下≫ そうですね。今までのオーナーは、本当の旅館のオーナーで、海石榴(つばき)の借景となる「箱根大観山」という、かなり箱根まで行かないと到達しないような山がありますが、そこの一番てっぺんまで、実は、株式会社山翠楼の持ち物です。それは結局、その当時、そのオーナーが購入し、山を見ても、他人の家を一軒も建たせない、全部自分のところの持ち物とした。 それから、今はありがたいと思っていますが、海石榴(つばき)のお客様に出す食器、1個が何万円という食器を現実に今お客様に出していて、壊れても補充もできませんが、そういうところにいろいろ投資をされた。それが、今はありがたい面もありますけど、投資効率からすれば少し悪かったのではないかということがありまして、私がその命題を負わされているわけですけど、ファンドが入ってから、そういうものをどんどん絞っていっています。 私はずうっと、ホテルマン一筋で、何十年とサービス一筋で、ここへ来てもサービス一筋です。要するに、旅館というのは、良いサービスと、良い料理、清潔な施設、これを続ければお客さんに支持される。という考えを私は持っています。 例えば、きょうもそうですが、皆さん、お部屋で夕食を召し上がられますけれども、合理化のために係を少なくしてブッフェパーティで出すとか、そういう旅館もたくさんありますよね。でも、そういうところで売上を上げるのではなくて、あくまでも、良いサービスで、良い料理で、清潔な施設という中で、それを好んでくださるお客様に来ていただくという方針が私の基本なので、ファンドから改めて私に会社の経営をしてくれないかと言われたときも、自分の経営主体はそれだけから、それじゃなくて、ふだん、3時か4時ごろチェックインされたら、玄関に係がいて、「いらっしゃいませ」と頭を下げて、何人かがあそこにいて、ご挨拶をする。下足番がいて、下足を取る。そこからお部屋の雰囲気を味わっていただくというやり方ですね。それを好むお客様に来ていただくという、非常にオーソドックスなやり方です。それをしないのであれば、ファンドから頼まれたときも、経営はできないと。そのスタイルを貫いて、ここ固有のお客様を増やすことはできるけれども、合理化で部屋係を減らすとか、フロント係がいなくなるとか、下足のまま部屋に上がれるようにするとかいうふうに方向転換をするならば、私は経営者としてそういう能力はないからと。それを承知の上でと。いうことで引き受けました。 この方針は、前のオーナーのやり方と変わっていないということですか。 ≪松下≫ ほとんど変わってないです。同じとは言いませんが。前はあまりにもむだがありすぎましたので、そういう面ではかなり合理化している部分もある。それから、社員の中に入っていってコミュニケーションをとりながらやる。前は、オーナーがいて、オーナーの下には部長も課長もない、みんな一兵卒、自分が指示して命令を下せばいいというスタイルでした。 従業員の統率をとるのはどなただったのですか。 ≪松下≫ 最初に私がきたときには運営だけは私にとらせていました。 社長さんが、大きな方針としては同じスタイルを踏襲するということで、ここで収益は改善していらっしゃると思いますが、どういうところを改善なさったのでしょうか。 ≪松下≫ これはこの間、会合で使った資料ですが、この赤いオレンジのラインは、上に書いてありますが、湯河原町に宿泊しているお客様のトレンドです。とにかく、平成17年2月から今年2月までの記録ですが、ずうっと下がっています。山翠楼はブルーのラインですが、平成19年に内部を一部改装しまして、これが終わったときに私が来たんですけど、そこから上がっていっています。ただ、一番ピークのところでリーマンショックがありまして、これはやはりすごくて、実は、今は下がっています。下がっていますけど、湯河原町の中におけるシェアは、この下に書いてありますが、平成17年では、湯河原町の総来客数の7.6%でしたが、今年は9.4%です。ですから、落ちてはいますけど、シェアとしては、湯河原に70軒くらいの旅館がありますが、約1割はここの旅館か隣の海石榴に泊まってくださっているということです。 なぜこうなったかというのは、もう一つ理由がありまして、内部のお客をじわじわと増やしてはいくけれど、それだけをしていてはだめだと。オーナーとして、ファンドが持った以上やってほしいことは、まず投資だと。こちらの要望するものをつくってほしいと、要望しました。それで、この旅館としてはまあまあの額を投資してもらって、きょう、男性のお客様は夜8時までしか入れないのですが、屋上露天風呂といって、非常にながめがよくて評判のいい露天風呂をこしらえたり、お部屋を10室ほど、それまではなかったんですけど、露天風呂付きの客室をつくったり、スパをつくって、これもまた非常に評判がよくて売上にすごく寄与していますが、そういう投資をしてもらいました。 何を入れるかというのは誰が決めたんですか。 ≪松下≫ 今は私の下にいるスタッフたちが、こういうものがあったらいいという意見を言って、それをファンドが取り入れてくれたということです。 だから、我々の仕事は売上を上げることですけど、ファンドがやるべき仕事というのは、旅館によっては、抜本的な、急にiPodのような新技術が発明されるわけでもないし、医薬品の飛躍的な薬が発見されるわけでもないし、旅館に何が必要かというと、投資以外にはないんですよ。 ですから、施設への投資はファンドの役目。旅館、サービス業というのは、いくら施設をきれいにしても、サービスと料理と施設の清潔さが付随していなければ、お客様は絶対にリピートしてくれません。今、私が最も気にしているのは、お客様の声がどうなっているかです。毎日毎日アンケートを読んだり、あるいは、ネットに書き込みがありますので、それが厳しい目で見られますから、そういうお客様の評価を受けながら、指摘されたところは、直せるものは直していく、改善できるものは改善していく。そういうことがないと、いくら施設をきれいにしてもダメですよね。 従業員は、前のオーナーのもとで働いていた方がいて、その後、ファンドが入って社長さんが来られたということですが、従業員は、見る目や働く気持ちで随分といろいろ変わってくると思いますがその点は如何ですか。 ≪松下≫ 全くおっしゃるとおりです。 私、ホテルマン時代に顧客サービスの部長を務めていました。要するに、CSですね。顧客満足度をどうやって上げていくかと。そういう言い方はおかしいですけど、何十年とそれをしていますので、その辺のノウハウは体の中にしみついているものがありますから、ここへ来ても、私は、教育だけはスタッフに任せないんです。私自身がお部屋の係を、何人かに分けて、サービスとは何か、なぜ顧客満足度を上げなければならないのか、それを上げることによって自分たちもサービスに自信が持てる、お客様も喜ぶ、そうすると、結局、それによってお客が増えて収入が上がって皆さんの収入もアップすると。いうミーティングを半年に1回は必ずすることにしています。なぜ顧客満足をさせなければならないか、すれば自分にとっても得だということをわからせる教育を何回にも分けてやっています。少ないときは3人くらい。全員やりますので、空いている時間帯に、時間表をつくって、空いているところに自分の名前を入れろと。そういう教育をしています。 それはお話ですか。対談のような形で。 ≪松下≫ そうです。意見も聞きながらね。 それだけは自分がやっています。もちろん、おかみとか支配人とか、唐紙をあけるときは立ったままあけないで、きちんと座って、最初に左手で少しあけて、それから右手をそえて全部あけなさいとか、そういう技術論は彼らがやります。だけど、それは形の上だけのことであって、お部屋係にお客様が満足して、お客様がまたこの係にサービスしてほしいと思う気持ちにさせるのは、なぜ自分たちが顧客満足を上げることが必要なのかということを心の中でわからないとできないですね。そういう部分は、私は、どちらかといえば今までずっとやってきたことなので、そのノウハウがあると。 従業員は、実際には変わられたんですか。 ≪松下≫ いえ、上から下まで、ほとんど変わっていません。 リストラとか従業員を減らすとか、問題社員等の扱いとかの対応はなかったんですか。 ≪松下≫ 問題社員とか高齢社員というのは、それなりに納得した上で辞めていただいていますけど。景気が悪くてリストラとか、そういうことは全くしていません。
by JAREC
| 2011-04-26 14:46
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