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2011年 12月 19日
震災復興へのグランドデザイン・ロードマップに関する提言
序 東日本大震災をもたらした「東北地方太平洋沖地震」は、破壊断層の範囲は南北400 km×東西200 km、断層の滑り量は最大20メートルという1000年に一度の規模の地震であり、それが引き起こした巨大津波は、世界最大級の釜石港防潮堤をはじめ各地で防潮堤を乗り越え、あるいは破壊し、市街地に壊滅的被害を与えた。 地震国日本は歴史の中で多くの大津波を経験しており、三陸には過去の被災から教訓を得て既に高台に集団移転していた集落もあったが、一方で、平地に家を建てて住んでいた人々の心の中に、「大きな防潮堤があるのだから津波はここまでは来ないだろう」という油断が生じていたとすれば悲劇である。大自然の力を、人が作った構造物で完封することは不可能なことが再認識され、津波を受け流す発想、1000年に一度の巨大津波が来たとき、少なくとも人々の命は守る「減災」の考え方が各界で提唱されている。 そして今、各地で復興計画案が作られており、岩手県を例に取れば被災12市町村の復興計画(行政素案)が出揃った。これらの素案は、国の復興基本方針や県の復興基本計画に基づき、各市町村・地域の産業や自然条件が考慮されて策定されているが、被災者の個別事情に応じたさまざまな意向は未反映で、住民主体のまちづくり提案が待たれる。 被災者の中には「復興住宅」への早期入居を望む声も多いが、防潮堤の築造、高台の切土造成、や低地の嵩上げ(盛土造成)、道路や鉄道の再整備等には相当の時間を要し、仮設住宅を出た後の住まいや雇用を求める被災者に対して、復興の過程の各段階の生活がイメージできるようにする必要がある。 さらに、被災前から高齢化、人口減少等の問題が進行していた多くの地域において、復興は単なる原状回復であってはならない。生産資源の分布に基づく適切な産業配置、そこから生まれる雇用の総量に適合した人口フレームが計画されるべきである。その上で、被災地の復興だけではなく、被災者の移転受け皿としての意味も持つ、地域中心都市の街なか再生や新市街地の形成など、大きな視野で「グランドデザイン」を構築し、その実現に向けた「ロードマップ」を策定して、二度と今回のような悲劇を繰り返さないまちづくりを的確に推進すべきである。 同時に、震災復興を「不動産・地域・市街地のあり方」という観点から見ると、少々異なったビジョンが見えてくる。土地・建物は国民の生活・活動に欠くことのできない基盤、安定した価値を持つ資産であるが、今回の地震は、土地の平面的変位や地盤沈下をもたらし、津波が建物を損壊するなど、その基盤を根底から揺るがしてしまった今、的確な土地利用計画に基づいた安心・安全な「不動産・地域・市街地」を再構築すべきである。 この提言は、「不動産・地域・市街地のあり方」に関する専門家集団である当協会が、本年4月に東日本大震災復興等支援特別委員会を設置して、末尾添付のメンバーの参画を得て取り纏めたもので、上記のような視点にたって世に出すものであり、今後の震災復興の一助になれば幸甚である。 平成23年12月15日 NPO法人日本不動産カウンセラー協会 理事長 河 野 擴 提 言 前提1被災地復興、ひいては東北地方・わが国復興の第一歩として、地域の構造・土地利用のあり方を示す「グランドデザイン」及びその実現のための具体的道筋を示す「ロードマップ」を策定すべきである。 前提2どんなに巨大で強靭な防潮堤・防波堤でも、すべての津波を止めることはできない。「津波防災まちづくり」の認識に立脚して、大地震・大津波が来ても「安心して眠れ、安全に逃げられるまちづくり」「人の命は守れる減災まちづくり」の発想が必要である。 前提3不動産(土地・建物)はそれらをとりまく安全・安心な市街地の上に成立するものであり、両者は相互依存の関係にあることを認識し、防潮堤等を含む市街地・都市基盤施設の整備、津波における浸水の程度を勘案した土地利用の計画、建物の構造基準の制定が求められる。 これらを前提として、以下のように提言する。 提言1地域の未来を構想するグランドデザインの構築 ■ 被災した地域にはさまざまな規模の市町村・集落があり、その多くにおいては被災前から高齢化・人口減少等の問題が存在していた。被災地の復興が急務ではあるが、ここで一歩踏みとどまり、東北地方全体から発想する大きな視点で地域の未来を構想するグランドデザインを構築することが重要である。 ■ この震災を契機に東北圏は、これまでの東京を重心とした一極集中型の地域構造から脱却し、海と山、太平洋側と日本海側を結ぶ東西の連携を促進し、小規模な都市・圏域が自立しながらネットワークされる都市構造へ転換すべきである。 ■ そのうえで、被災した市町村・集落において維持・成立可能な一次・二次・三次産業の業態及び規模、それらの新た連携のあり方等を、リノベーションも含めて検証し、それらの産業・経済の基盤の上に成立する就業人口・居住人口のフレームを算定したうえで、地域全体の土地利用のあり方、地域のグランドデザインを構築する必要がある。 ■ 漁業・水産業については、従事者及びその家族の安全な就労と居住を確保しつつ、従事者の心意気を尊重しながら従来の業態・規模を取り戻し、さらには発展させることを基本とする。従事者の住居、避難施設、冷凍倉庫、水産加工場等については、漁港、防潮堤との関係において安全に十分配慮し、合理的に計画・設計・建設しなければならない。 ■ 農業・林業については、地域、個々の生産者の状況をふまえつつ、震災復興を契機に、TPP等による市場環境の変化があっても生き残れるよう、大規模化・企業化等により生産効率を向上すべきである。5分以内に避難可能な避難タワーを設置するなど安全対策を万全にした上で、防潮堤の内側の耕地を再生し、必要に応じて自然エネルギーを利用する野菜工場の設置などを推進する。 ■ 製造加工、研究開発を含めた第二次産業については、地域の状況をふまえつつ、サプライチェーンの再生とリダンダンシーの確保、地熱・風・太陽エネルギー、木質バイオマス燃料等再生可能なエネルギーの利用も含めて被災前の産業規模の復活、さらなる発展を図る。「(仮称)東日本復興特区」で提案されている「クリーンエネルギー活用促進特区」等の動向もふまえて、地震に対して比較的安全な地域に、自然エネルギーを重視した持続可能な都市開発を体現する「東北スマートシティ」を整備し、周辺の被災地からの雇用・移住促進と併せてモデル都市として整備し発展させる。 ■ 被災した各地域においても、この「東北スマートシティ」モデル都市を一つの規範として、再生可能エネルギーを活用した低炭素のグリーン建築、グリーン交通を促進する。各種の再生エネルギーにより発電する建築、蓄電施設としての機能も持つ電気自動車等をミックスし、ピーク時のみ送電電力を使用すれば済むような地域レベルのスマートグリッド(ローカルグリッド)等によりエネルギーの安定供給・省エネルギー化・低炭素化を推進し、小規模な単位がネットワークされる次世代型のインフラストラクチャーを構築する。 ■ 高齢化、人口減少が進む各地域において、漁場、農地、工場、その他第二次産業・第三次産業の生産資源の分布に適合した適正な人口配分という視点で、被災地の復興と新市街地の形成、中規模都市の街なか再生・コンパクト化と併せた自立経済圏域の再編成を図る。これらの圏域の中で、高齢化がますます進むことを念頭において地域包括ケアの考え方を取り入れて、安全・安心なコミュニティを醸成していく。 ■ 上記のような総合的な施策により、適切な産業・公共サービスの配置、就業人口・居住人口のフレーム設定を行い、地域あるいは圏域における自立性を確保し、グランドデザインを策定する。 提言2土地利用計画 「安心して眠れ、安全に逃げられるまちづくり」 ■ グランドデザインに基づいて、土地利用計画を策定する。被災地には、急峻な斜面が海際まで迫っている地域、平坦な土地が奥深くまで広がっている地域など、さまざまな自然的要因を持つ地域がある。それぞれの地域の特性を踏まえ、巨大地震・津波から住民の命を守ることを第一に、高台等の安全な地域や安全な高層建物に住み、避難施設を備えた場所で働く、「安心して眠れ、安全に逃げられるまちづくり」を進める。 ■ 災害時に司令塔となる行政施設、救助に必要な通信施設・消防施設・医療施設、避難生活をサポートする厚生・教育・商業・生活支援施設等、安全・安心な生活の基盤となる公共建築が生き延び、いち早く復興に取り組めるようなまちづくりを進める。 ■ 国土交通省も「一線防御」から「多重防御」への転換を提唱しているとおり、防潮堤の計画にあたっては、100年に1度の津波は防ぐが、1000年に1度の津波が来たら防ぎきれないことを十分に認識し、100年に1度の津波は防ぐことのできる防潮堤を整備し、そのうえで二線堤となり高所避難場所の機能も持つ幹線道路、鉄道、避難路ともなる歩行者デッキネットワークを整備するなど、多重的・多角的な減災まちづくりを進める必要がある。さらには、沿岸の漁港を修復または再整備する場合には、防潮堤の計画と合わせて冷凍倉庫の配置、避難施設の配置等を合理的に計画することが重要である。 ■ 上記のような防潮堤の計画を前提として、国土交通省も提唱する「津波防災まちづくり」を推進する。今回の巨大津波で現実に浸水した区域をはじめ、津波被害の可能性がある沿岸の平地や平野部における土地・建物利用のあり方を科学的に検証し、技術基準とともに明確にすべきである。1000年に1度の津波における浸水の程度を勘案した適切な土地利用を計画し、「津波災害特別警戒区域」等、今後国が定める法制度にのっとり、「居住禁止区域」や「津波避難ビル・津波防災型集合住宅以外は建設禁止の区域」を定めて、併せて許容される建物の構造基準を定める。 ■ 続いて、地域に宅地造成可能な高台がある場合には、その高台を造成してできる宅地に配置すべき公共建築、住宅の建築可能量を算定し、住民意向調査に基づく需要をふまえ、防災集団移転促進事業や土地区画整理事業の事業性も勘案して造成計画を決定すべきである。その際、生態環境の保護、景観形成に留意して、造成は最小限にとどめるべきである。 ■ また、地域に宅地造成可能な高台がない場合や、高台だけでは住宅が不足する場合には、造成残土等を用いて一定の区域を「嵩上げ(盛土造成)」して安全な宅地とすることも一つの手段である。この場合、大津波が来たときの浸水想定に基づき、当該嵩上げ後の宅地に建設する建築物に関する構造基準を定めるべきである。一方でまた、地盤が良好で海岸から一定距離離れた区域を指定して、一定の構造要件を備えた「津波防災型集合住宅」の建設も検討すべきである。 ■ 住み慣れた場所からの移転を余儀なくされる場合、嵩上げ後に住み慣れた場所に住める場合、地震・津波に強い構造の建物に建て替える場合など、地域の状況を踏まえながらまちづくりを推進する。 提言3復興・生活再建に向けたロードマップの策定 ■ 「1000年の計」としての復興のグランドデザイン、及びこれに基づく土地利用計画の案が描けたら、これらについて被災者・住民の理解を得る必要がある。被災者にとっては、「明日の仕事と生活」が切迫した関心事であり、グランドデザイン・土地利用計画の提示と併せて、被災地の状況にあった生活再建がイメージできるような、復興・生活再建に向けたロードマップ(道筋)が示されなければならない。 ■ 復興のグランドデザイン策定には一定の時間を要する。叡智を集結して策定を急ぐとともに、その策定までの間、復興まちづくり事業の支障となるような建築行為については土地利用規制、建築制限をかける必要がある。 ■ 土地利用規制に関して、東日本大震災復興構想会議 復興への提言「~悲惨のなかの希望~」(2011年6月25日)においては、「これまでの建築基準法第39条6(災害危険区域の指定)や同法第84条7(被災市街地における建築制限)による制限に加え、土地利用規制と各種事業とを組み合わせた『多重防御』を実現する必要がある。」としている。 ■ 被災各県においても、災害危険区域の指定に基づく建築制限が実施され、当初は6ヶ月の期限であったが、延長措置がとられている市町村もある。宮城県では、気仙沼市、東松島市、名取市、南三陸町、女川町、山元町の市街地の建築制限が最長2カ月間延長された。国の復興財源の見通しが見えず、各市町は都市計画決定に慎重になっていることが背景に見て取れる。 ■ 宮城県石巻市は、2011年9月12日、「東日本大震災により甚大な被害を受けた市街地における建築制限の特例に関する法律」に基づき被災市街地の建築制限区域に指定されていた区域の一部を、 被災市街地復興特別措置法に基づく「被災市街地復興推進地域」に決定した。これに伴い、同地域内においては、復興まちづくり事業の支障とならない自己居住用又は自己業務の建築物で、構造、規模が一定の条件を満たし容易に移転し、又は除却ができる建築行為については知事の許可を受けて行えるようになった。 さらに、政府が検討している復興特別区域(復興特区)の枠組みの中で、復興を円滑に進めるため、建築基準法に基づく用途地域により禁止されている建物であっても、被災地向けの特例として、本来の用途に大きく反しなければ認める方針を盛り込もうとしている。一方で、区域指定のなされていない地域では、住民が家を補修して再び済み始める状況が見られており、このまま推移すると権利関係が錯綜する恐れもあるので注意が必要である。 ■ これらの動向をふまえたうえで、財源の見通しをつけて、「グランドデザインに基づく土地利用計画」、「津波災害特別警戒区域」、「被災市街地復興推進地域」等の早期指定を図り、各区域でどのような建築物が可能かの構造基準や指針を明示すべきである。 ■ 併せて、以下のような特例措置を早期に決定すべきである。 ● 土地利用の調整を迅速に行うために、都市計画法、農業振興地域整備法、森林法等にかかる各 種手続きを、一つの計画のもとワンストップで処理する特例措置 ● 漁港区域、農用地区域、保安林にかかる許可等個別法に基づく開発許可にあたって事業計画 (漁港漁場整備計画、土地改良事業計画等)を策定不要とする特例措置 ● 土地利用再編計画の作成から土地利用再編事業開始までの間、事業の円滑化および安全性確保 の観点から、既存法との関係を踏まえつつ建築行為の制限を課すことができる特別措置 ● 所有者の所在が不明な土地の取り扱いについての特別措置 復興特区の特例として、市街地再開発や集団移転、道路・公営住宅の整備などの復興事業で、測量や工事をする際、土地所有者の行方がわからず同意が得られない場合でも、市町村長らの許可があれば資材置き場としての一時使用や地盤調査などを認める特例が関連法案に盛り込まれることとなった。 ■ 次に、利用が制限される土地の公的買取りを含めた各種事業の要綱等を明確にし、被災者の生活再建の指針としなければならない。 ● 買取りの種別としては、防災集団移転事業による買取り、漁業・水産業または農業を行う法人 による買取り、公園等公共用地取得のための買取りなどが考えられる。 ● いずれの場合も買取り対象地の地権者全員のコンセンサスを得る仕組みの構築が重要である。 ● これらの買取りにあたっての買取り価格は、原則として被災後の評価額となることに留意すべ きである。 ● 地区外への移転希望者、地区内高台への移転希望者、地区内の一定の区域で嵩上げが実施され る場合の嵩上げ後の土地への移転希望者など、それぞれの意向に応じてどのような対応が可能かを、各種事業の枠組みの中で検討する。 ■ 防災集団移転事業の事業主体は市町村(特別な場合は県)であり、その事業費については国庫助制度等があるが、原則として、被災者は移転先の土地購入と住宅建設を自己負担で賄わなければならない。被災者の自己負担額の軽減を図るためには、事業主体が移転促進区域内の用地買収を行う必要がある。 ■ 一方、土地区画整理事業は、高台等安全な宅地への飛び換地、津波防災型集合住宅に関する立体換地、嵩上げ後の従前地に対応する換地など、被災者の意向に応じた各種メニューが構築できる可能性をもっている。阪神淡路大震災時の震災復興土地区画整理事業の補助制度・税制上の特例等を参考にして、宅地所有者の申し出により集約換地が可能な復興共同住宅街区の創設、清算金に代わる住宅(地区外住宅を含む)等の給付、公共・公益施設用地の保留地としての確保を検討すべきである。「津波災害特別警戒区域」等が指定されて津波避難ビル・津波防災型集合住宅以外は建設禁止となった区域等において中心市街地を再生する場合、震災復興型市街地再開発事業の適用を検討すべきである。 ■ 被災者の心の支えとなるコミュニティを再生・再建することも重要である。上記の考え方に基づき段階的に復興を進めていきながら、被災者の生活再建、コミュニティ形成スピードに合わせて柔軟にロードマップを軌道修正していくことが重要である。 ■ 現在、復興特別区域法案の基本的考え方が公開されている。復興特別区域では、規制、手続き等の特例措置、税・財政・金融上の支援措置をワンストップで講じることができるようになる。地方公共団体が復興特別区域としての計画を作成すると、その計画に基づく事業の実施については、例えば、開発許可、農地転用の許可等事象に必要となる複数の許可手続きをワンストップで処理する方法や、住宅地と農地を一体的に交換・整備する事業等新しいタイプの事業制度の創設も検討されている。これらについても注視することが必要である。 ◆復興まちづくりのロードマップ(例) ◆グランドデザイン・ロードマップのケーススタディ ―岩手県山田町山田地区― 1) 山田町復興計画(行政素案)の概要 ■ 山田町は2011年9月28日、「山田町復興計画(行政素案)」を公表した。今後は地区ごとに住民説明会を開催し、住民の意見聴取等を行い、12月の策定を目指すとしている。 ① 防災施設の基本的考え方 ● 従来の防潮堤高さは6.6m、東日本大震災の津波高さは10.9mであったが、既往第2位の明治三 陸大津波9.7mに耐えられる防潮堤を整備する。 ● 東日本大震災レベルの津波に対しては、地盤の嵩上げ(盛土造成)や避難対策の強化によ って対応、避難場所は津波によって被災しない場所に配置、津波による被災の危険性が高い区 域では、緊急避難施設を整備する。 ● 三陸縦貫自動車道沿いに防災拠点を整備する。 ② 土地利用の基本的な考え方 ● 被災を免れた既存集落は極力現在の配置を維持する。 ● 被災した区域の一部を嵩上げし、安全な住宅地として再編成する。 ● 既存市街地・集落との関係に配慮し、丘陵部の造成を行い、新たな住宅地を確保する。 ● 漁港及び関連施設は原則として現在の配置を活かして復旧する。 ● 陸中山田駅周辺を中心市街地として位置づけ、賑わいのある空間づくりを目指す。 ● 国道45号沿いには沿道型商業施設、水産加工施設、流通施設などを誘導する。 ③ 地区別の基本的考え方(山田地区) ◆基本方針 ● 国道45号線は現ルートを維持する。 ● 山田漁港は現位置で復旧する。 ● 都市計画道路細浦柳沢線は現計画ルートを踏襲する。 ● JR山田線は現ルートを基本とし、市街地の再編(嵩上げ)に合わせて安全性・利便性を向上する。 ● 海側から山側への避難路を適切に配置し、三陸縦貫自動車道沿いに防災拠点を整備する。 ◆以下の3つの復興パターンを検討 案1:中心市街地(陸中山田駅付近)周辺の嵩上げ部及び高台に住宅地を整備 ● 国道45号より山側で嵩上げを行い、被災前とほぼ同じ位置に中心市街地を配置 ● 山田中学校北側の丘陵部を切土造成し、高台に最小限の住宅地を整備 案2:住宅地の一部を北浜・柳沢地区へ移転 ● 国道45号より山側で嵩上げを行い、被災前とほぼ同じ位置に中心市街地を配置、細浦柳沢線沿いに住宅地を整備 ● 住宅地は北浜・柳沢地区も視野に入れて供給(切土造成を行わない。) 案3:中心市街地を山側に移動し、住宅地を高台に移転 ● JR山田線より山側で嵩上げを行う。 ● 山田中学校北側の丘陵部を切土造成し、高台に大規模な住宅地を整備 2) グランドデザイン・土地利用計画・「津波災害特別警戒区域」等の考え方 上記の行政素案に対して、グランドデザイン・土地利用計画・「津波災害特別警戒区域」等の考え方に関する前述の提言に照らして考察すると以下のようになる。 ■ 維持・成立可能な一次・二次・三次産業の業態及び規模及び新たな連携のあり方等を、リノベーションも含めて検証し、それらの産業・経済の基盤の上に成立する就業人口・居住人口のフレームを算定したうえで、地域全体のグランドデザイン・土地利用計画を策定すべきである。 ■ 人口フレームを設定し、「津波災害特別警戒区域」等の指定範囲を検討した上で、切土造成により整備すべき住宅地の規模、嵩上げにより整備すべき中心市街地の規模を算定すべきである。 ■ 山田漁港は現位置で復旧するにあたって、防潮堤の整備計画との関係において、従事者の住居、避難施設、冷凍倉庫、水産加工場等について安全に十分配慮し、合理的に計画・設計すべきである。 3) 復興に向けたロードマップの考え方 さらに、復興に向けたロードマップについて、以下のように提案する。 ■ 「津波災害特別警戒区域」等の指定が想定される区域において、当面の建築禁止措置の継続を図る。 ■ 地域全体のグランドデザイン・土地利用計画、切土造成により整備すべき住宅地の位置及び規模、嵩上げにより整備すべき中心市街地の位置及び規模の素案を定める。そのうえで、各被災者が選択できるメニューを提示し、意向調査を行う。 ■ ちなみに、山田町で2011年5~6月にかけて町民(全6、888世帯)対象に行ったアンケート調査(回答3、161)の結果によれば、今後の居住希望地に関して、「これまでと同じ地区で高台などに住みたい」が46.7%、「町内の他の地区で高台などに住みたい」が11.5%と、合わせて58.2%が高台等に居住する希望を示していたが、漁業、水産業等に携わる住民の多くは、海のそばを離れられないという回答であった。 ■ 意向調査の結果に基づいて、必要により修正し、地域全体のグランドデザイン・土地利用計画、切土造成により整備すべき住宅地の位置及び規模、嵩上げにより整備すべき中心市街地の位置及び規模を定め、都市計画決定等必要な手続きを進める。併せて、県知事による「津波災害特別警戒区域」等の指定を受ける。 ■ 嵩上げを計画する際には、低層部を駐車場等として、津波に強い構造を持つとして基準に適合した「津波防災型集合住宅」の建設についても代替案として検討すべきであろう。 ■ 資産買取りを含めた各種事業の要綱等が明らかにされた後、各被災者の生活再建が検討されることなる。地区外への移転希望者、地区内高台への移転希望者、嵩上げ後の土地への移転希望者など、それぞれの意向に応じてどのような対応が可能かを、各種事業の枠組みの中で検討する。 ■ 個々の被災者の生活再建が切実な課題であることはもちろんであるが、不動産(土地・建物)は災害に対して安全・安心で、安定した雇用機会のある市街地・地域・都市基盤の上に成立するものであることを認識し、その中で個々の被災者がどのようなビジョンを描けるかをふまえつつ、被災者の生活再建やコミュニティ形成スピードに合わせて柔軟にロードマップを軌道修正していくことが重要である。 以上
by JAREC
| 2011-12-19 11:41
| 東日本大震災関連
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