カテゴリ
以前の記事
2014年 05月 2014年 02月 2014年 01月 2013年 12月 2013年 10月 2013年 09月 2013年 07月 2013年 04月 2013年 01月 2012年 12月 2012年 11月 2012年 10月 2012年 09月 2012年 03月 2012年 02月 2012年 01月 2011年 12月 2011年 10月 2011年 05月 2011年 04月 2011年 03月 2010年 11月 最新のコメント
検索
タグ
その他のジャンル
最新の記事
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
2011年 12月 09日
米国不動産カウンセラー協会-The Counselors of Real Estate は、
高度な不動産アドバイスを業務として行う専門家の団体です。 1953年に設立され、CREの称号を有する会員約1100名(内米国、カナダを除く外国の会員は約50名)によって構成されています。 小規模ですが、CREは米国内の不動産関連業界で非常に名誉ある称号と位置づけられています。近年はグローバルに会員を増強する政策が取られていまして、日本からも現在4名がCREの称号を授与されて活躍しています。 不動産カウンセラー協会とも長い信頼関係の歴史があります。 麗澤大学の清水教授は、本年、日本の研究者としては始めてCREの称号が授与されました。JAREC会員の皆さんにおかれても、CRE称号の取得を目指してはいかがでしょうか。 以下に、CREになるための大まかなフローをご紹介します。 CRE-<米国不動産カウンセラー>になるには ①既存会員-CREによる推薦 推薦者は当人のスポンサーとなり、CREとしてふさわしい人物かどうかについて、学歴、職歴等も含んだ報告書をシカゴの事務局にまずは提出します。 ②推薦に際しての基本的な要件 大学卒業以上の学歴と最低10年以上の不動産カウンセリング実務実績は必須の条件ですが、実績に関しては無報酬(社内業務)でもかまいません。 ③予備審査 CREの資格審査委員会が上記の推薦人レポート内容をチェックした後、申請資格があると認めた場合に、本人に対して申請依頼のInvitationが送付されます。 ④申請書 本人は以下の内容を含む申請書類<英語>を記入し送付します。 <業務実績> 3-4件のカウンセリング実績-英語に翻訳の上、提出する必要があります。 3-4社(者)の依頼人に対して、CRE事務局が直接ヒアリングする場合もあります。 <社会貢献活動> どのような活動をしているかを報告するよう要請があります。 ⑤面接 上記の書類審査にパスした場合に、既存のCRE会員による面接が実施されます。かつては、米国において英語で実施されましたが、昨今は、日本人の既存会員により日本語で行われることもあります 以上のプロセスを経て、約半年で合否が決定されます。 次いで、本年CREの称号を付与された麗澤大学の清水千弘教授からの称号取得について寄稿をいただいたので、紹介します。 不動産市場における専門家 清水千弘ブリティッシュコロンビア大学経済学部客員教授,麗澤大学経済学部教授 1.専門家(Expert,Specialist and Professional)とは? 不動産市場には,多くの専門家と呼ばれる人たちが活躍している。不動産鑑定士にはじまり,宅地建物取引主任者,建築士や測量士,広義にとらえれば,税理士・弁護士なども,不動産市場を支える人たちである。それらの専門家と呼ばれる人たちは,彼らが持つ専門性を提供し,その対価としての報酬を得て生計を立てる。 2000年代初頭において小泉政権下で行われた総合規制改革会議では,士業に対する問題が取り上げられた。そのなかでは,とりわけ不動産鑑定士の報酬の高さが問題になった。また,宅地建物取引主任者の,不動産仲介における手数料の高さもまた議論の対象となった。 専門家が得る報酬が高いからといって問題になるわけではない。専門家が提供する専門性とみられているものが,実は規制によって生み出されているのではないか,または官によって創出された業によって社会的な適正水準よりも高い報酬として移転しているのではないか,といったことが議論の対象となっていた。 ここでは,二つの問題が浮かび上がる。どのような専門性を習得し,そして,その専門性が時代の中で必要とされ続けているのかどうか,加えて,その対価として支払われているものが,規制によって市場が歪められているものではないか,自由競争になっていないのではないか,ということである。 ※仲介手数料が,6万円プラス契約価格の3%と上限が設定され,実質的には上限に張り付いていることが問題となった。 不動産鑑定士を例にとれば,鑑定士として業務を行うためには,最低限度の専門性を持ち得ていなければならないということを前提として,国家試験が課せられている。試験を通じて,最低限の専門性(Specialty)を具備する。しかし,それだけでは業として報酬を得ることはできない。一定の実務を通じてのさまざまな技量を習得する必要がある。そのような実践や訓練を通じて習得された専門性(Expertise)があってこそ,報酬をようやく得ることができる。 しかし,本当のプロフェッショナル(Professional)として専門家で居続けるためには,市場の変化に応じて要求される専門性を常に持ち続けていなければならない。 以下,専門性とその対価として支払われる報酬の問題に焦点を当てて,国際比較と合わせて議論を進めたい。 2.報酬と介在価値 それでは,専門性を提供した対価としての報酬とは,いったい,どのように決まっているのか。報酬を,専門家としての賃金としてとらえれば,経済学で言う賃金の決定理論が利用できる。経済学の教科書では,実質的な賃金は,限界生産性で決定される(限界生産力仮説),または,仕事の特性,とりわけ労働力を提供することによって被る限界不効用に応じて決定される(補償賃金仮説),と考えられてきた。しかし,これでは,日本で一番賃金が高いといわれる損害保険会社や広告代理店の賃金の高さは説明ができない。 一般的に経営者は効率を重視するために,実質賃金は限界生産性よりも高くなるという。つまり,高い賃金を得ている雇用者は,不正などをすることによって失職することも機会費用が高いために,限界生産性よりも高い賃金を支払ったとしても,監視費用や企業のさまざまなレピュテーション・リスク(Reputation Risk)を回避するための監視費用を節約できることで,帳尻が合うというのである。 ※ 不動産鑑定業界では,近年,高い報酬を得ていた時代には,起こりえなかったような問題が発生し,国や協会による監視やシステム投資などが要求されている状況を考えれば,社会全体の中で新しい制度設計が必要になってきていることを予感させることが続いている。 このような説明だけでは,鑑定士の報酬は説明ができない。不動産専門家の仕事が,けして3Kと呼ばれるような仕事の人たちよりも限界不効用が大きいわけではない。また,基本的には,個人として活動する方がほとんどであるために,効率性仮説からでも説明できない。そうすると,官によって生み出された大きな需要と国家試験制度という中で業が行われるパイをコントロールしてきたことによって,限界生産性が吊り上げられていたと考えるべきであろう。 しかし,近年において,このような構造が急速に崩れ始めたことによって,改めて専門家としての市場への介在価値が問われるようになったのである。 3.グローバル社会における専門家-RICS, CRE- それでは,全体としての市場の縮小が続く中で,不動産の専門家はどのような専門性を発揮していけばいいのであろうか。ここで米英に目を向けてみよう。米国には,日本の不動産鑑定協会と単純には比較できないものの,Appraisal Institute(AI)という組織がある。さらに,AIとは直接的な関係はないが,選りすぐられた専門性を持つ一部のプロフェッショナルで構成される米国不動産カウンセラー協会(Counselors of Real Estate: CRE) http://www.cre.org/ という組織がある。 一方,英国の不動産鑑定協会になるRoyal Institution of Chartered Surveyors :RICS) http://www.rics.org/には,Member of RICSとFellow of RICSなどといったカテゴリーがある。まずは,Memberとなり,専門家として活動したのちに(MRICS),高い専門性が認められた場合に限り,Fellow(FRICS)となっていく。 ここで,まず二つの組織・資格(CRE, FRICS)の共通点を見てみよう。両者ともに,単なる資格制度などといったものではなく,より高い専門性が広く認知されたときに,InvitationやRecommendationによってはじめてメンバーとしての資格を持つ。これが意味するところは,試験などといった取り決められた一定の標準的な専門性を座学によって習得すればなれるというのではなく,実際の不動産市場でどのような仕事をしたのか,その仕事がプロフェッショナル(Professional)なものとして広く求められたのか,その卓越した専門性とは何かが問われる。そして,それを評価するのは,国際的な専門家であり,顧客なのである。そのため,メンバーの業務範囲も広い。もちろん日本の不動産鑑定士が行うような仕事もするが,環境,金融,開発など,さまざまな専門性を発揮している。 もう一つは,グローバル化である。もちろん公用語は英語となり,RICSのロゴの横には,「the mark of property professionalism worldwide」と書かれている。RICSは英国において設立された組織であったが,今では,欧州,米国,オセアニア,アラブ諸国,そして,アジアに拠点ができつつあり,ネットワーク化が進んでいる。不動産市場を含む経済市場のクロスボーダー化,グローバル化が進むなかで,より不動産市場の専門家も,グローバル化を図っていくことが重要となる。その時に大切になるのが,研ぎ澄まされた専門性を持ち得ているのかどうかということである。 さらに,これらは相乗効果を持つ。とりわけCREでは強いネットワークが作られており,日常的にビジネス機会の提供や情報提供が行われている。それぞれの専門性が融合した時に,より大きなビジネスを推し進める力となっているのである。筆者は,最近CREの称号を授与された。そのことで今まで学会や国際会議でご一緒した方々の何人かが,CREのメンバーになっており,さらにネットワークの輪が世界中に広がっていくことを確信している。実務界ではなくアカデミックなポジションにいるものにおいてすら,その有用性と将来の発展性を強く実感しているところである。 4.専門家に求められる要件 わが国の不動産鑑定ビジネスは,大きな内需と官需に支えられながら,一度試験に合格してしまえば,一生仕事ができる時代が長く続いた。しかし,内需は縮小し,官需も期待できない中では,専門性の幅を広げ,新しいビジネス機会を創造していくことと,活躍の場を限定するのではなく,地理的にも広い市場を対象として事業を展開していくことが要請される。 そのためには,そのような市場で活躍できる専門性を身に着けていかなければならない。不動産鑑定士の試験科目にあるのは,民法,行政法規,鑑定評価理論など,国内の知識だけである。会計学や経済学では,その他のプロフェッショナルな専門家と比較すれば,必ずしも優位性を持っているわけではない。これらだけでは,複雑化する市場とグローバル化する市場の中では,専門家として生き残っていくことは難しくなるのではないか。 これからの市場の中で生きていくためには,金融,統計,国際財務などの知識も要求されよう。しかし,何よりも強く要求されるのが,顧客視点に立ったプロフェッショナルな行動であろう。CREのホームページを見ると,「The professional organization for the most trusted advisors on Real Estate」とある。ここに書かれている一文字一文字の意味をしっかりと考えなければならないものと感じている。 そして,一人でも多くの日本人の専門家が,CREやFRICSとなって国をまたがる専門家と協業し,国際的に活躍されることを願っている。(バンクーバーにて) [謝辞] CRE,FRICSの日本でのパイオニアは,磯部裕幸氏である。同氏には,本稿への執筆の機会をいただくだけでなく,筆者をCREのメンバーにしていただくために多大な尽力をいただいた。ここに記して御礼申し上げます。
by JAREC
| 2011-12-09 11:10
|
ファン申請 |
||